愛媛県西条市、西日本最高峰の石鎚山。
その雄大な麓に、江戸時代から続く「まぼろしのお茶」があります。
その名も「石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)」。
かつて、霊峰・石鎚山を訪れるお遍路さんたちに振る舞われ、旅の疲れを癒す一杯として親しまれてきました。

「石鎚黒茶」には、世界でもわずか2ヶ所でしか作られていない、乳酸菌による二段発酵茶という製法が採用されています。
一時期は過疎化によって生産者が最後の1軒にまで減ってしまっていたそうです。
しかし、この伝統を途絶えさせまいと立ち上がった女性たちがいました。
それが、「さつき会」さんです。
最後の生産者から製法を学び、技術を後継へと繋ぎ、今もその灯を守り続けています。
奇跡の製法「二段発酵」が織りなす味わい

2023年3月には、国の重要無形民俗文化財に指定された「石鎚黒茶」。
最大の特徴は、一般的なお茶とは異なる「後発酵」という製法にあります。
おもにお茶は、収穫した茶葉を蒸して発酵を止める「不発酵茶」、熱風で酸化させる「発酵茶」、その中間である「半発酵茶」に分類されます。

これに対し、後発酵茶は、茶葉を加熱した後に微生物の力で発酵させる、世界的にも珍しいお茶です。
現在、二段発酵茶は世界でこの石鎚黒茶と、高知県の碁石茶の2例しか確認されていないとのこと。
石鎚黒茶は、微生物発酵と乳酸菌発酵の二段階で発酵させており、口に含んだ瞬間に広がる品のある酸味と、すっきりとキレのある後味が特徴です。
奥深く豊かな香りが、喉を通り過ぎた後も長く続きます。
特に暑い時期は、冷茶としていただくのもおすすめです。
また、乳酸菌を使用していることから、健康を意識する方にも支持されているとのこと。
さらに、一般的な緑茶よりも圧倒的にカフェインが少なく、お子様や寝る前でも安心して楽しめるのも嬉しいですね。
受け継がれる丁寧な「手仕事」で紡ぎ出す

石鎚黒茶の製造工程は、すべてが手作業で行われます。
約2ヶ月もの時間をかけ、自然の力と人の手仕事が織りなす工程を経て、石鎚黒茶は完成するのです。

まず、毎年7月頃に硬く育った茶葉を枝ごと収穫します。
一般的なお茶が新芽を摘むのに対し、石鎚黒茶では成育した茶葉を使うのが特徴です。

収穫した茶葉はきれいに洗浄され、釜でじっくりと蒸されていきます。
そして、蒸した茶葉は木桶に詰められ、石鎚山の山間に置かれます。

すると、桶に住み着いた天然の微生物が働き始め、白いカビが生えてきます。
これが好気発酵です。

この発酵の間に、茶葉を一つひとつ丁寧に手で揉み、均等に発酵が進むように促します。

その後、再び茶葉を桶に詰め、重石を乗せて蓋をします。
すると今度は乳酸菌が働き始め、嫌気発酵が進みます。
これが二段発酵の秘密です。

発酵を終えた茶葉は太陽の下で天日干しされ、じっくりと乾燥させます。
このように、約2ヶ月もの時間をかけ、自然の力と人の手仕事が織りなす工程を経て、石鎚黒茶は完成します。

発酵を専攻する大学教授や学生も足を運んでおり、学術的にも注目されているそう。

さつき会さんは、石鎚黒茶の生産はもちろん、その魅力を広める活動にも力を入れています。
毎年、地元の人々と黒茶づくりを体験できるイベントを開催し、子どもから大人まで、多くの人に「手仕事」と「発酵の不思議」を伝えています。
2025年には大阪・関西万博 EXPO メッセ「WASSE」にて出品し、全国に石鎚黒茶の歴史・魅力を発信しました。
最近では、石鎚黒茶を取り扱う日本茶専門店やセレクトショップが増えており、愛媛県外でも手に入れる機会が増えているそうです。
石鎚黒茶から広がる楽しみ方

石鎚黒茶は、さつき会さんのオンラインショップや、西条市観光交流センター、えひめ愛顔の観光物産館をはじめ、さまざまな場所で購入できます。
InstagramのDM、お電話、FAXでも注文を受け付けているそうです。

おすすめは、新茶と3年熟成茶葉の風味の違いをじっくりと堪能できる「飲み比べセット」や、手軽に楽しめる「石鎚黒茶ティーバッグ」。

また、スリランカ産紅茶の茶葉と石鎚黒茶をブレンドした「石鎚黒茶フレーバーティー」は、春夏秋冬それぞれ異なる味わいをご用意しているそうです。

先人たちの知恵と努力が詰まった「石鎚黒茶」。
一杯のお茶には、長い歴史と作り手の情熱が込められています。
ぜひ一度、このまぼろしのお茶を味わってみませんか?
基本情報
名 称:石鎚黒茶 さつき会
住 所:愛媛県西条市小松町北川
電話FAX:0898-72-3927
Instagram:こちら
オンラインショップ :こちら
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